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無料小説【青いカップル】

2017/11/02

寒さ吹き飛ばすネタが入ってきたのでついつい……。
これは実際に経験した話。実際に聞いた話。
さ、部屋の気温に注意して読んでください。

【青いカップル】

先日、夫と一緒に犬の散歩に出た私。
時刻は夜の11時過ぎ。
安全の為に行きつけの公園は避け、住宅街を抜けるルートを選び、私たちは歩き出した。

住宅街と言っても、古いアパートや無人となった家屋が目立つ昼間でも寂しい場所。
時間も遅く、電気が付いている窓を見つけることすら出来ないほどで、私たちは静かに仄暗い街灯の灯りだけを頼りに歩いていたのだ。

途中、小さなどぶ川に橋がかかっており、そこを抜けるといよいよ道が狭くなる。
無人の家と荒れ果てたアパートの間にある道は、ひと一人が通るのが精一杯。

そんなところにポツン……と自転車が置かれている。

犬は置かれた自転車のわきをするりと抜けていくが、私も夫も廃屋となった家とアパートの階段の下に置かれたその自転車の隙間を、身体を横にして通らなければならなくなってしまった。

「邪魔だなぁ……」
思わず自転車の横を通り過ぎながら呟く私。

その時、アパートの階段のすぐ横。
自転車の影になる位置に、恐らく自転車の持ち主であろう、若い男の子と女の子が座っているのに気がついた。

(やべ……)

恨めしそうなめでこちらを見ているカップル。
私は、彼らの逢瀬の邪魔をしてしまったことに小さく苦笑いし、慌てて口を閉ざすと一足先に広い通りに出た夫の元に駆けつけた。

「今さぁ、思わず『邪魔』って言っちゃったんだけど、あのカップルが邪魔だって言われたって思っちゃったら悪いよね。可哀想なことしちゃった」

そう言う私に、夫は小さく首を傾げた。
「カップルなんていた?」

「え、自転車のすぐ後ろ。階段の横んところにいたじゃん」
「いたかなぁ? 暗くて何も見えなかったけど……あそこ、街灯の灯りも届かないし、危ないよね」
「………………」
そう言われてみればそうだった。

街灯はアパートの向こう側にしかない。
足下がギリギリ見えるか見えないかの暗がりで、さらに無人のアパートの階段の影になっているところに座っているカップルが、どうしてあんなにはっきり見えたのだろうか。
でも、確かに私は見ていたのだ。

青白く浮かび上がっていたカップルの姿を……。

 

 

 

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