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無料小説【ホラー】隙間【怪談千夜2】

怪談千夜2の執筆がほぼ終わり。

残すところ、電子化と配信のみとなりましたので、皆さんにも少し……ほんの少し内容をお伝えしたいと思います。

今回は怪談千夜2の中から「隙間」というお話しを無料公開いたします。

怪談千夜2にはこの他、98個(隙間を入れて99話)の話を閉じ込めています。

書籍配信と共になにかが……起こるかもしれません……。

【隙間】

夜の公衆電話

富山県の市街地の外れに住む漫画家のKさんは、締め切りに終われ深夜まで起きていることが多かった。

その日も締め切り間近で、深夜二時頃まで作業をしていたのだが、ふと喉の渇きを覚え、すぐ近くの自販機へ飲み物を買いに出かけることにした。

アパートを出て一つ目の角を曲がる。

そこには、暗い住宅街の中で不似合いな明るさを放つ、古い自販機が置かれている場所だった。

Kさんは小銭を自販機に入れようとしたのだが、深夜までの作業で疲れていたのだろう、指先を滑らせて百円玉を自販機の下に落としてしまった。

チャリン……と、静かな住宅街に響く音を立てて、百円玉が自販機の下の隙間に入り込んでしまう。

(あーあ、奥に入ってしまっていなければいいのだけど……)

そう思いながら、しゃがみ込んだKさん。

そのKさんの目と――八十歳ほどの、白髪の汚い顔をした老人の目が合った。

自販機と地面との十五センチほどの隙間から、老人が無表情でKさんの目を見上げていたのだ。

老人の鼻のすぐ前には、Kさんが落とした百円玉がある。

だが、彼女はきゃあと一言叫び、百円玉もそのままに、アパートに走って戻ったそうだ。

 

Kさんが隙間に老人の顔を見たという自販機は、まだ、そこにある。

 

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※こちらの作品は小説家になろうにも同文にて投稿しております※

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